『論文の書き方』清水幾太郎著vs『日本語の作文技術』本田勝一著

★要約
『論文の書き方』
1、読むという行為に比べ書くという行為は格段に積極度が高くエネルギー消費量も大きい。書くことで初めて物事を深く理解できるのである。
2、初歩の段階では字数制限付の短文をまとめるのが良い練習となるであろう。
3、便利至極な「が」の使用には注意すること。
4、文体とは思想である。
『日本語の作文技術』
1、分かりやすい文章を書こう。分かりにくい文章を語順を変えて分かりやすく直す練習も面白そう。
2、日本語は決して特殊な言語ではない。言語とはその社会の論理であり、日本語の論理や文法はヨーロッパ語の間尺で計測できない。
3、①節を先に、句を後に。②長い修飾語ほど前に、短いほど後に。③大状況・重要事項ほど前に。
4、テンは思想の最小単位を表す。むやみに打つべからず。①長い修飾語が二つ以上あるとき。②語順が逆順のときに。
5、漢字とカナ。分かりにくい「こん虫」「書かん」「両せい類」。
6、主語廃止論。日本語に主語は不要。文頭に主語を持ってくる文のなんと翻訳調で分かりにくいことか。
7、係助詞「ハ」は文の題目を表し、格助詞ガノニモを兼務する。
8、文自体が笑っていてはならない。
9、自分の文章に固有のリズムが無意識に出るようになったとき、その人は自らの文体を完成させたのである。
10、日本語は述語。主格・目的格・対格・位置格などは述語の前で対等。対してヨーロッパ語は主語が述語を支配し、強力な主従関係を作る。
★採点
両書とも好著だが分量・緻密さ・説得力すべての面で後者が圧倒している。最後少しだれたものの、あの分量を読ませて終始あきさせないまとめ方には脱帽である。内容は申し分なし。惜しむらくは筆者の文体が私好みではなかったこと。
ところで本田勝一氏といえば、かの朝日新聞の看板記者。つい色眼鏡つきで見てしまうのだが、本書での主張には全面的に賛成。その通り。日本語はヨーロッパ語に比べて劣っていない。言語に優劣はない。
★勝者『日本語の作文技術』