座右の銘

座右の銘は何かと問われ、それをサラッと答えられたら
かっこいいな、と思っていた。
こんなシチュエーションを想像してみよう。
小さなショットバー
時間は夜の10時過ぎくらい。
つま先がちょっと付く程度の背もたれの無いカウンターに腰掛けている。
薄暗い照明。心地よいジャズ。
カウンター越しには、髭をたくわえたすこし寡黙目のマスター。
手元には、スコッチのストレートがワンショット。
そして隣には、お気に入りのかわいい女の子が。
お互い少しほろ酔いである。
彼女がこう尋ねてくる。
「danranさんの座右の銘って何ですか」
私はこう答える。
「そうだな・・・」
しばし小考のあと、
「志のあるところ、道は開ける。かな」
うーーーーん・・・
かっこつけすぎ!
かといって、
「犬も歩けば棒にあたる。かな」
では、バカだし。
なにがベストか・・・?
考えた。一時期、こればっかり考えていた時期があった。
少しハズしていて、かつ、なるほど、とうならせるような言葉は無いか。
そしていつの日か、琴線に触れる文句に出会ったのだ。気付いたのだ。
それが、
「命短し、恋せよ乙女」
であった。
もちろん字義通りこの文句を捉えられると困る。
私は男性だし、乙女になり得ない、なる気も無い。
そうじゃない。
この言葉は、こう解釈したいのだ。すなわち、
「チャンスは今しかない。
尻込みするな。あたって砕けろ。勇気を出せ」
と、自分を鼓舞する言葉として。
もちろん対象は恋だけではない。
およそ人生にかかわるすべてのことに適用できる考えである。
我々は、いや、私は弱い。
弱気になりがちだし、迷いに負けてしまいそうになるときがある。
そんなときには、この言葉を思い出すようにしたい。
長くなったのでそろそろ終わるが、最後に先ほどの妄想の続きをもう一度。
「danranさんの座右の銘って何ですか」
私はこう答える。
「そうだな・・・」
しばし小考のあと、
「命短し、恋せよ乙女。かな」
・・・
ふっ、
キマった。