構造計算偽造のつづき

あまり触れたくないのだが、最近大きな話題なので、ゼネコン社員のひとりとして、また少し書いてみたい。
唐突だが、私は自動車業界がうらやましくて仕方ない。なぜなら、寡占企業が独占している業界であり、異常なダンピングも起こりようが無く、そして顧客が一般消費者のため、あまり値切られる心配が無いからだ。
一方の建設業界はというと、業界全体のパイが少なくなっているにも関わらず、建設業の企業数はいまだ増加の一途(のはず)。受注時には、砂糖に群がる蟻のように、総合建設業者(ゼネコン)が群がり、値引き合戦を展開する。施主もたくさんゼネコンが来るものだから、どこが一番安くする? って感じで、露骨になめまくった態度で出てくる(こともある)。
さらに、「今後の付き合いもありますからね」という必殺の殺し文句があり、相手が大きければ大きいほど、ゼネコンは断れなくなる。そして、なかば強制的に受注させられてしまう。
あまり大きな声ではいえないが、この業界では、利益供与と疑わんばかりの契約が珍しくない。数十億から百億以上の値引きも現実に起こっている。
建設業界がどんぶり勘定というのは過去の話(でもないか? よく知らない)。今はかなり厳しい見積もりをしている。それなのにこの値引き。完全なる赤字である。回復不可能。
でも会社はこれを回復せよと、担当社員に命令してくる。たいてい、工期は厳しい。土曜日が休みの現場なんて、まずない。竣工近くなると、日曜日がなくなるのは当然である。
あー、また業界の悪口になってきた。
話が脇道にそれた。言いたかったこと。
ゼネコンも、自動車みたいに、完全に設計施工にすればいい。これがいいたかった。
例えばトヨタトヨタの車は、トヨタがデザインし、トヨタが設計し、トヨタが作っている。トヨタに限らず日産、マツダ、スバル、皆そうだ。
ところが建設業はどうか。設計は、星の数ほどある設計事務所のどこかがやり、構造設計も設備設計も、星の数ほどもあるなかのどこかがやり、施工も星の数ほどあるゼネコンのどこかがやる。
これで一貫性のある、良質な建築物が出来るはずが無い。(でもないか。ちょっと言い過ぎ)
自動車業界みたく、企画・設計・施工を一貫して行う実力のある建設業者のみに、建設業を限定すればいいのだ。そうすれば、蓄積されたノウハウ、合理的な設計手法を駆使して、経済的で、良質な建築物を作り出すことが出来るだろう。これは断言出来ると思う。そうなれば、構造設計屋が、仕事を取るために、構造設計を偽造するなどという異常事態など、起こるべくもない。
現時点では、そんな実力のある建設業者は、いわゆるスーパーゼネコン5社+αしかないだろう。この改革が実現すれば、さまざまな設計事務所(建築、設備、構造)と施工業者の大合併が起こって面白いかもしれない。
ひいては、無理なダンピングによる価格破壊も抑えられ、適正工期を確保する発言力も得られ、我々ゼネコン社員の、労働基準を完全に逸脱した不当な雇用環境が、是正されるのも期待できるかもしれない。