大学生になったころ(2)

当時、麻雀マンガが隆盛を誇っていた。
それは片山まさゆきの功績が大きい。『ぎゅわんぶらあ自己中心派』をヤンマガに連載させ、絶大な支持を得ていた漫画家だ。
彼の最高傑作はなんと言っても『スーパーヅガン』。悩める豊臣君の姿は、全ての麻雀フリークを爆笑の渦に巻き込んだ。
月刊の麻雀マンガ雑誌もたくさんあった。『近代麻雀』『近代麻雀ゴールド』『Aクラス麻雀』『麻雀ゴラク』などなど、いろんなのがコンビニの棚を賑わしていた。
(ちなみに、個人的に好きだった作品をあげると、かわぐちかいじの『はっぽうやぶれ』、嶺岸○○の『あぶれもん』、著者失念だが『獏』。時代が下がって、『麻雀蜃気楼』、そして麻雀マンガの金字塔と言える『アカギ』である。有名な『哭きの竜』はそれほど好きではなかった)
なんでいきなりこんなことを書いたかというと、もちろん私が麻雀が大好きだったから。思いっきり麻雀を打ちたい! 大学生になったとき、心ひそかにそう思っていたのは確かだ。
ダンス部に入ったと昨日書いたが、定着してしまった大きな理由は、麻雀好きがたくさんいたからだ。
特に、大先輩諸氏がすごかった。私の4年先輩のMさん(5回生)、6年先輩のSさん(7回生)。この二人が強烈な引力で私をひきつけた。(あと、7年先輩のKさんという人もいるのだが、この人のことはまた機会があれば)
ちなみに二人の学年を聞いていぶかしげられるかもしれない。解説しておくとMさんは歯学部なので、カリキュラムは6年。決しておかしくは無いのだが、この時点で1年留年していた。
Sさんは基礎工学部で、この時点で、3留(だったか?)。この二人といつも一緒にいることとなった私が、その2年後、留年の憂き目を見たのは、至極当然であったかもしれない。
他にもクラブには麻雀好きがたくさんいたので、大学のすぐそばという立地条件に恵まれた私の下宿が、雀荘と化すのに、さして時間はかからなかった。
とにかくめちゃくちゃ麻雀を打った。部屋の鍵をかけることなど帰省の時を除いて無かったので、ちょっと外出して帰ってきたら誰かが麻雀を打っていたとか、寝てて起きたら、いつのまにか人が上がりこんできて麻雀打ってたりとか、そんなことが日常茶飯事だった。
その下宿にいた2年間に一体どれくらい打っただろう。2年目の夏が一番すごかった。当時はエアコンも無かったから、汗だらだらかいて、タバコバカバカ吸いながら、ただひたすら麻雀を打った。
一ヶ月で、私の部屋で打った回数が、半チャン500回を超え、私が入った半チャンが確か315回。このとき、64時間連続で麻雀を打ち続けるという大記録を打ち立てた。そのあと20時間近く爆睡し、起きた後、また22時間打ち続けたはず。「このまま死んでもいい」と思った。今にして思えば、キチガイじみているが。
このころ散々打ちまくったせいか、今は全く麻雀を打ちたいと思わない。帰省したとき、時々打つくらいだ。
なお、2年生になったころから、半チャンごとの記録を残そうと、麻雀ノートを取り始めたのだが、このノートはダンス部の麻雀好き部員に代々引き継がれていくこととなった。数年前、クラブに顔を出したとき、その麻雀ノートがまだクラブで引き継がれていると聞いて驚くと同時に、うれしかった。数冊は紛失したらしいが。
☆おまけ:Sさんのエピソード☆
Sさんは、時々、お金を持たずに私の下宿にやってきた。麻雀を打つが、負けてもお金を持っていないので払えない。借りだ。
Sさんはタバコを吸うのだが、すぐになくなる。「悪いけど、セブンスターワンカートン買ってきてくれへんか」お金を持っていないので借りだ。
Sさんは、一日一度、おなかがすくようだ。そんな時、「腹へった。悪いけど、ローソン行って、焼きそば弁当買ってきてくれへんか」もちろんお金は持っていないので借りだ。Sさんが口にするのは、一日一度の焼きそば弁当だけだ。
私の部屋にはファミコンがあった。Sさんはファミコンが大好きだった。私が学校から帰ってきたらファミコンをしている。麻雀を打っている間、ファミコンをしている。私が寝るとき、ファミコンをしている。起きたときもファミコンをしていて、出かけるときも帰ってきたときもファミコンをしている。いつ寝てたんだろうか?
当時、『ドラゴンクエストⅣ』がはやっており、私の下宿にあった。Sさんはそれをいつもやっていた。ある日、「おい、ちょっと見てみ」というので見てみると、ちょうど最後の敵と戦うところだった。こちらのパーティーは勇者と、その仲間3人。みなレベル99の最高値だ。
闘いが始まって驚いた。なんと最後の最強の敵を一撃でやっつけたのだ。唖然としている私にSさんは言った。「すごいやろ。こいつらはな、まず戦士でレベル99にして、そのあと転職して、魔法使いでレベル99にして、また転職して、僧侶で・・・、と繰り返して、最後、遊び人(だったかな?)でレベル99にしたんや。これ以上最強のパーティーは絶対あれへん」
そして、帰るときSさんは言う。「ぼちぼち帰るわ。悪いけど帰りの電車賃、貸してくれへんか」
ちなみに、Sさんは、最強の男と呼ばれていた。麻雀で負けても金を払わないし、さんざんお金を借りまくって、返さないで許されるという、恵まれた性格の人だった。