大学生になったころ(3)

大学時代、一緒にいたやつで、私に最も影響を与えたやつ、それがKBであった。同じ建築工学科の同級生だ。
気持ち悪いくらいいつも一緒にいた。一緒の布団で寝たことが何度もあった。彼は私に抱きついて来るのであった。キスもされた。私が初めてキスした相手は、実は男だ。KBだ。悪夢だ。
私がタバコを吸うようになったもの、彼のせいだ。大学一年の秋頃、彼が私の下宿にやってきては、タバコを勧めた。私はタバコだけは嫌だったので、断固断った。それでも彼は毎日きてはタバコを勧めた。やがて私は、「じゃ、一本だけな」と折れた。ゴホゴホッとむせながら、セブンスターの煙を肺に流し込んだ。
何日か、そんな日が続いた。すると、ある日突然、パタッと彼が私の下宿に来なくなった。寂しくなった。何が寂しいんだろう? 彼がうちに来ないからか? それとも・・・ひょっとして、タバコが無いから・・・?
首をかしげながら、私はタバコの自動販売機に向かい、彼が吸っているのと同じセブンスターを一箱買った。まずかった。しかし、タバコを吸っていると、口元が寂しくなる。こんなまずいもの、と思いながらも、次の一本がほしくなる。結局、彼が勧めた一本のタバコは、30歳になってタバコをやめるまでに吸った本数、約12万本(11年間、一日30本として)に変身した。
しかし私は彼が好きであった。猪突猛進型の私に対し、「人生はひまつぶし」を公言し、ひょうひょうと進む彼の姿は私には魅力的だった。
彼の下宿にもよく行った。1年生の夏、石橋の彼の下宿で、一緒に試験のカンペを作りながら、池田聡のファーストアルバム『Missing』が、一晩中エンドレスでリピートされていたのは忘れられない。(当時はテープだった)
1年生を終える頃、彼は小野原に引っ越したのだが、私も2年生を終える頃、彼を追うように小野原に引っ越した。その後、卒業してからしばらくまで、彼との付き合いはずっと続いた。
正直、彼の存在が私の支えであった期間もある。KB氏には、この場を代えてお礼をいいたいと思う。(思いもかけぬ方向に話が進んでしまった)
最後に、大学一年のときの、彼とのちょっと面白いエピソードを。
ある日彼が私の下宿にやってきた。これから梅田でバイトで、帰ったらうちによるという。私は少し体調が悪かったのだが、分かったと答えた。その後私の体調は本格的に悪くなり、気付くと熱が38度5分も出ていた。
あいつが家へきたら、食い物飲み物を買ってきてもらおう。そう思い、布団やら毛布やら掛けまくって寝て待った。そこへ彼がやってきた。助かった。おい、KB、俺熱があんねん。ちょっと買い物行ってきてくれへんか。
ところが彼の調子がおかしい。部屋に入って寝転んだまま動かない。熱を測ってみるとなんと39度5分。
こりゃやばい、と彼を私が寝ていた布団に入れ、コンビニに行って食料を調達し、薬を飲ませ、介抱させられるはめになった。布団には彼が寝ているので、仕方なく、私はコタツで寝ることにしたという。